取引価格の情報整備
(不動産鑑定:住宅新報社所収)
 清水千弘

2001年12月18日に,総合規制改革会議のとりまとめが公表された。そのなかの都市再生WGでは不動産情報の開示について触れられている。
(http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo)。
 ここでは,取引価格情報の整備の必要性が指摘されており,近い将来には,欧米のように成約価格情報が社会全体で共有できるようになることが期待される。
 仕事柄,外資系の金融機関の方とプロジェクトをすることがあるが,彼らは日本にきて投資をしようとした時に,日本の市場にいかに信頼できる情報がないことに気付き,驚いたという方が多い。そんなはずはないと思い,必至で情報を収集しようとしたということを聞くと,これが日本の不動産市場の特殊性だと気付く。そして,公示地価という制度。不動産投資が活発な国で地価を国が公示するという制度を持つ国は少ないようで,市場価格とも違うこの指標の意味はどのようなものかと質問された時に,答えようがなかった。社会主義国でもないといわれたときに,これまた日本の不動産市場の特殊性か感じた。
 そして,彼らが鑑定人に期待するのは取引情報の収集だということを聞くと,鑑定業界の将来に不安を感じることがある。情報を囲い込むことでビジネスができていた時代は終わり,情報を共有するなかで,専門家としての分析力で勝負できる土台を早急に作り上げていくことの必要性を痛感させられた。
 公示地価のために収集している取引価格情報はアンケートというきわめて不安定な仕組みに頼っている。たとえば,ドイツのように取引されたすべての情報が社会システムとして鑑定協会に蓄積されていくようにすることは,できないのであろうか。業界全体を上げて実現していくことが必要ではないかと感じた次第である。